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令和5年度の海外資産の税務調査

令和5年度の海外資産の税務調査

公認会計士の高鳥拓也でございます。
7月から税務署の新事務年度となって、今年度の税務調査が始まっています。
令和5年度の海外資産に対する税務調査の動向について、コメントさせていただきます。

 

1.CRS情報に基づく調査対象者選定

海外資産の税務調査の対象者の選定において、CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)情報交換により海外の税務当局から提供された海外金融口座情報が積極活用されています。
CRS情報交換は2018年9月から始まり、毎年実施されていますので、税務署には5年間の情報の蓄積があります。単純な申告漏れは当然として、資産残高推移が適切に国外財産調書に反映されていない場合は、税務調査の対象となる可能性がありますのでご注意ください。

また、海外プライベートバンク、海外資産管理会社、海外信託(Trust)を保有されている場合、海外資産額が大きいケースが大半のため、税務署は関心を持っており、税務調査の対象となる可能性が高いと捉えていただくのがよいかと思います。
これらスキーム事案の日本の税務上の取扱いは、事案毎に、準拠した外国法やTrust Deedなどから法的性質を特定し、日本の税制に照らして判断することになりますので、実務的な判断が難しい局面が多くあります。
税務調査にて、スキーム設計時に意図した法的性質・効果を考慮しない指摘を受けた場合は、的確に反論を行う必要がありますので、その際はご相談いただければと思います。

2.為替差益に対する課税

昨年からの急激な円安基調において、海外口座にあった外貨を円転して日本に送金された方が多くいらっしゃいます。円転により為替差益が発生している場合は、雑所得として申告する必要がありますが、その必要性を認識していない等の理由で、申告漏れの状態にある方も多いかと思います。
税務署は、海外から日本への100万円超の送金を、着金元銀行から提供される「国外送金等調書」によって全てチェックしています。そして、為替差益の申告漏れがあると判断した方に対して税務調査を実施しています。
2022年中に、まとまった外貨を円転して日本に送金された方は、為替差益の申告要否を確認して、申告漏れとなっている場合は税務調査となる前に自主的に申告することをおすすめいたします。

なお、非居住者期間に獲得した外貨を、日本帰国後に円転して日本に送金した場合、外貨スタート(片道)のため、為替差損益を認識する必要はないのでは とのご質問を受けることが多いですが、税法上は、円転時に日本居住者である以上、外貨取得時と円転時の為替差損益を認識する必要がありますので、ご注意ください。

また、海外口座にある外貨で海外の金融商品や不動産を購入した場合も、購入時点で為替差損益が実現したものとされますので、為替差益が発生しているときは、雑所得として申告が必要です。併せてご注意ください。
これら海外(外→外)での取引は、上記の蓄積したCRS情報に基づく資産残高推移、不動産登記情報、(海外税務当局から提供される)非居住者支払調書などから把握されることになります。

為替差益の計算は、実務上、外貨の取得時のレート計算が困難となることが多いので(円転した外貨をいつ取得したのか分からない!)、その対応方法などについてはご相談いただければと思います。

3.お尋ねの送付

税務署は入手した情報に基づいて、「国外送金等のお尋ね」や「国外財産調書の提出義務の確認について」の文書を送付しています。本文書にて申告漏れを認識された方は、回答と併せて修正申告等の対応をされることをおすすめします。
本文書は、税務調査ではなく行政指導の位置づけですので、この段階で申告されれば自主申告として加算税等は減免されることになります。

弊所は、海外資産の税務調査の連絡があった方、「国外送金等のお尋ね」や「国外財産調書の提出義務の確認について」の文書が届いた方に対して、ご支援が可能ですので、お困りごとがありましたらご連絡いただければと思います。

当コラムは2023年7月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。

税務相談は1時間3万円(消費税込)で承っております。
税理士には守秘義務がありますので、ご相談いただいた内容が税務署など第三者に知られることはありません。どうぞご安心ください。

 

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