海外資産
令和6年度の海外資産の税務調査
公認会計士の高鳥拓也でございます。
令和6年度の海外資産に対する税務調査の動向について、昨年度の傾向を踏まえてコメントさせていただきます。
1.CRS情報に基づく調査対象者選定
昨年度と同様に、CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)情報交換により海外の税務当局から提供された海外金融口座情報を端緒とする海外資産に対する実地調査や「お尋ね」による簡易な接触が重点項目として実施される見込みです。申告漏れがある方は税務署からの接触がある前に自主的な申告・開示をおすすめします。
2.為替差益に対する課税
2022年3月頃からの急激な円安基調が続くなか、海外送金情報を端緒とする為替差益の申告漏れの指摘が増えることが予想されます。税務署が着金銀行から海外送金情報を入手して、実地調査に着手するのは概ね1年後ですので、2022年・2023年に海外から日本へまとまった金額の送金をされた方は、為替差益の申告漏れがないか、確認することをおすすめします。
[昨年度の事例]:
海外からの帰国者や日本移住者の海外送金情報(日本不動産購入資金など)を端緒として実地調査がなされた。海外送金に係る為替差益の認識要否が論点となり、雑所得の申告漏れを指摘された。
3.海外スキーム事案に対する課税
海外プライベートバンク口座、海外生命保険、海外資産管理会社、海外信託(Trust)を保有されている場合、海外資産額が大きいケースが大半のため、実地調査の対象となる可能性が高いです。
税務調査にて、スキーム設計時に意図した法的性質・効果を考慮しない指摘を受けた場合は、的確に反論を行う必要がありますので、その際はご相談いただければと思います。
[昨年度の事例]:
日本居住者(国際結婚の日本帰国者)が保有する海外の信託や資産管理会社の口座情報がCRS情報交換で国税当局に提供され、この情報を端緒に事実関係等の確認のため(税務署の知見蓄積のため)実地調査がなされた。受益者(beneficiary owner)へのタックス・ヘイブン税制適用が論点となり、雑所得の申告漏れを指摘された。
当コラムは2024年7月現在の税制に基づいて作成しており、読者の皆様のご理解を深めるために内容を簡素化している場合がございます。また、具体的な状況によって課税関係が変わる可能性がありますので、記載情報に基づいて行動される前に、弊所までご相談して頂ければと思います。
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